設計目線の土地選び

土地の分譲計画図

高台からの景色

東側隣地の専用通路

初期案のプレゼンテーション図面(配置図)

現在のHOUSE-N(竣工7年目)


昨今、資材高騰や不動産価格高騰などにより、家づくりのハードルが上がってきています。資金計画や土地選びがより重要なフェーズとなります。現在の状況とは違いがあるものの、2016年に竣工したHOUSE-Nの土地探しで考えていたことなどが、役立つ情報になるのではないかと思い、今更ながら、どのようにして土地を決定したのかを遡りたいと思います。


HOUSE-Nでの土地選びで重要視したのは主に2つです。

1つ目は「初期段階に資金計画を行い資金配分のバランスを見極めること」です。

HOUSE-Nの総予算(土地・建物・設計料・諸経費)は3300万でした。何にどれくらい費用が掛かり、土地や建物に掛けられる予算がいくらなのか、妥当なラインを見極めないと、土地は購入できたものの建物に掛けれる費用が不足して満足した計画にならない、最悪、計画できないという事態になりかねませんでした。初期段階の資金計画はとても重要なフェーズになります。結果、土地は1000~1200万、建物は1700~1900万、が妥当なバランスだと結論付け、土地探しを行いました。

2つ目は「設計目線の土地選び」です。

土地の予算が1000~1200万なのは決して余裕がある状態ではありません。当然に完璧な土地を購入することは難しくなります。一定のデメリットなどがありながら、それを設計の力により払拭できるような土地の選び方が必要でした。

勤務地や実家からの交通手段など、そして、予算を考慮した結果、八王子市が土地探しのターゲットとなりました。50件近い土地を精査し、15件程の土地を見学しました。そんな中で辿りついたのが現在の土地でした。高台を売りにしている分譲地だったのですが、施主も私も、その景色が魅力的なものとは感じませんでした。高台に面していない側(道路側)は価格が低く設定されていたこともあり、そちら側のみに絞り検討を行いました。その中でも最も安く価格設定がされている土地の条件が良いことに気付きました。以下に羅列します。

①土地の幅・南北に長い土地
並列駐車を諦め、縦列駐車としても、建物の計画は問題なくできる土地の幅があることが判断できました。加えて、縦列駐車にすることにより建物を道路側(北側)に寄せて計画できるため、南側から日照が確保しやすくなることが予測できました。

②東側隣地の専用通路
土地の東側隣地と、その先の隣地も連続して専用通路がある状態でした。専用通路に建物が建つ可能性は極めて低いため、東側は6M(専用通路3M×2)の空地となり、日照条件が良いことが予測できました。

③北側斜線の有利さ
第一種低層住居専用地域だったため、北側斜線による規制(北側の隣地の日照を確保するための建物高さ制限)がありますが、北側が道路であることと、方位の関係上、制限を受けることはほぼなく、自由度が高いと判断できました。

④防火指定の有無
防火指定が無い地域(火災などへの対策の必要性が低い地域)だったため、サッシを防火設備(火に強い構造)にする必要がなく、建物費用が抑えられると判断できました。

⑤地盤の強度
事前に確認した開発資料(土地の分譲に関する資料)から高台側は擁壁の築造があるため盛土でしたが、高台から離れている道路側は盛土でないと判断できました。加えて、近隣の地盤調査データを取得し読み取った結果、地盤の強度が高い、つまりは、地盤改良の可能性が低く、建物に充てられる費用が多くなることが予測できました(これに関しては絶対ということはないため、可能性を含めて、余裕度をみながら建物計画を進めましたが、結果的に地盤改良は必要なかったため、建物費用に充当しました)

上記の5つの条件などから土地の購入を確定させました。紆余曲折はあったものの、当初の資金計画通り建物は完成し、竣工して現在7年が経過しました。


初期段階から資金計画をしっかり行い、設計目線で土地選びをすると、家づくりの可能性が広がるかもしれません。そんな参考の一つになれば幸いです。