「子育てしながら建築を仕事にする」を読んでみて

成瀬友梨さん編著の「子育てしながら建築を仕事にする」読了。SNSでサラッと感想を書こうと考えていたが、思う所が多かった為、ブログを書くことにしてみた。

この本は、建築業界の第一線で活躍する方々が建築と子育ての両立について書き綴っているエッセイ的なものだ。赤裸々に語られる内容が非常に共感でき、参考にもなり、そして面白い。それと同時に、色々と考えさせられる一冊だった。

ご存じではないかもしれないが、建築業界の労働環境は中々厳しい。長時間労働、徹夜もしばしば、休みも少ない、加えて低賃金。それが当たり前のものだと、ある種の覚悟を決めて働いていたし、どこかでその覚悟こそが美徳だと思っていた部分があるような気がする。

若いうちはそれでよかった。建築と向き合い、我武者羅に働き、経験を増やし、知識を蓄える。自由な時間は多かったし、やりたい仕事をやっている充実感があるからだ。そのうち彼女(彼氏)ができ、結婚や子供について意識し出す。そうすると漠然と〝結婚していいものか〟〝子供ができたとして養えるか〟〝家庭に時間が避けるのか〟等と不安を抱き始める。この時点で建築を諦める人もいるし、本来やりたい業務を諦め、比較的安定した職場にシフトする人もいる。僕は、幸いにも結婚も子供も独立も諦めずに現状に至っている。それはパートナーに恵まれたことに他ならない。色々な人に言っているが、妻に出会わなかったら、独立どころか建築を続けていくこともできなかったと思う。それは、仕事や僕の夢に対する理解や精神的な支えになってくれたことが大きいが、経済的な支えになってくれていることも相まっている。

昨今、労働環境を良くすべく、働き方を見直す流れに世の中がなってきている。女性の社会進出が一般的となり、共働きも当たり前のものになりつつある。建築業界も例外ではない。フレックスタイム、時短勤務、在宅勤務、子育て支援等、既に新たな制度を設けている企業は多い。

話は少しずれるが僕は〝イクメン〟という言葉があまり好きではない。その言葉の裏には〝育児は女性がするもの〟という前提があるように感じるからだ。専業主婦をさせてあげられている夫なら良いのだが、事情はどうあれ共働きの夫婦であれば、男性にとって子育ては〝参加するもの〟ではなく〝共にするもの〟であるべきだと思う。

この本の冒頭に〝これから結婚して子供を持とうとしている社会人、彼らの上司に向けた本である〟と書いてある。前述のような時代を経験し、かつ、働き方変えようとする過渡期にも居合わせた僕らの世代は、声を上げなければいけないし、自分達の世代、また、次の世代の為に変革するべき立場にあると思う。〝特別でない普通の幸せ〟を諦めなければ始められない、続けられない環境はどう考えてもやはりおかしい。僕は建築設計が楽しいからこの仕事を選んだし、続けている。だからこそ、この仕事が希望溢れるものにしたい。

建築業界に限らず、同じような経験をした人、また、同じような不安を抱える人に是非、読んで頂きたい。