デニム感覚の家

デニムって〝器の大きい〟素材だと思うんです。

汚れても気にならない。傷がついても味になる。色が落ちれも名前がつく。ペンキが付いてもアクセントになる。破れても商品になる。

そんな感覚を住宅にも持ち込むべきだと考えています。

「公園で子供と遊ぶ時にスーツを着る」ような住宅が世の中には多いと感じます。子供と公園で遊ぶということは、汚れること等が前提条件です。だからスーツでは遊ばない。最適な服装じゃないからです。

住宅は、人が生活することが前提の建築です。汚れがつくこと、キズがつくこと、モノが増えること。それらのことは必然的に起こります。生活感が出ることが当たり前なはずなのに、生活感が出ることがマイナスに働くようなベースを作ってしまうことに矛盾を感じるのです。

老夫婦の家であれば「スーツ感覚」でもいいかもしれません。常に生活を整える作法を用いながら必要最低限のモノで過ごす生活は素敵だと思います。

しかし、基本的には、住宅は「デニム感覚」であるべきだと考えています。壁につけたキズも、床についた汚れも、子供の身長を刻んだ跡も、友人がお土産で買ってきたヘンテコな人形も、味となり雰囲気となり空気となる。そんな〝器の大きさ〟が住宅には必要だと思うんです。

〝住宅らしい〟素材や空間構成は何なのか。当たり前や常識・通例を疑いながら、模索しています。実は、いくつかのルールや法則が自分の中で見え始めています。しかし、それを明確に言語かすることは難しいものですし、するべきではないと思っています。

住宅は、半分は理屈、半分は感覚で良いというのが持論です。自身の作品を通して、その理屈や感覚が皆様に伝われば幸いです。