10年理論

私なりに住宅設計に対するコンセプトがいくつかあります。その中の1つの要素なのですが、住宅は〝シンプルであるべき〟だと考えています。なぜ、シンプルを求めるかというと、私の好みというわけではありません。価値観は変化するものだと考えているからです。

皆さんは10年前の服を着ていますか?体型の変化や耐久性は抜いて、あくまで好みの話でです。大抵の人の答えはNOだと思います。上質でバランスの良い白いTシャツであれば、10年経っても着るかもしれません。しかし、特徴的な服や流行の服は長いスパンは着れません。自分や時代のニーズから外れてしまうからです。

住宅にも同じことが起こり得ます。住宅は数十年という長いスパンで住まうものです。その最中、価値観の変化は絶対的に起こります。その変化に対応する為にはシンプルで飽きのこないもの選びをするべきだと考えています。アクセントクロスや外壁の張り分けも反対派です。数年したら飽きてしまうと思えるからです。

だからといって絶対にシンプルなものしか受け入れないかといえばそうではありません。私は「10年理論」と名付けていますが、何か特徴的なデザインや装飾をしたいと考えたとき〝10年後も愛せる自信があるか〟を問うようにしています。自信を持って「愛せる!」といえるものなら、それは不変的な価値観だといえます。振り切ってとことんやりきりましょう。その問いに対して疑問を抱いてしまった場合にはあまりオススメしません。

住宅やファッションだけではなく、すべてのことに精通するかもしれませんが、長く愛されるものには理由があるはずです。その真意を追求し、長く愛される住宅を設計していきたいものです。