住宅に残る〝跡〟について考える

ラグマットが敷いてあった場所となかった場所の境界線の跡


玄関框についた靴のゴムが擦れた跡


建具の歪み補正のためにストライクに埋木をした跡


壁に息子たちの身長を刻んだ跡


小屋に住み始めて1年超が過ぎました。先日、新築時に購入したラグマットの汚れが酷かったため、思い切って処分してみました。すると、ラグマットが敷いてあった場所となかった場所で傷や日焼けにより境界線ができていました。〝跡〟が残っていたのです。

その他にも、玄関框についた靴のゴムが擦れた跡、建具の歪み補正のためにストライクに埋木をした跡、壁に息子たちの身長を刻んだ跡等、色々な跡が小屋には残っています。これからもどんどん増えていくでしょう。

私は、その〝跡〟をポジティブなものと捉えていますし、それらがポジティブに働く空間構成が住宅らしいと考えています。〝住む〟という行為は実は〝荒い〟ものだと思うのです。住む中で必然的に起こる事柄による〝跡〟が住宅を彩る要素として、合わさり、味となり、空間と渾然一体となることが理想的だと考えています。

しかし、これは〝綺麗過ぎる〟仕様では成り立ちません。それらの〝跡〟は〝汚れ〟や〝傷〟としてネガティブなものとして捉えられることでしょう。住宅は工業製品ではありません。〝新築を新築のまま保つ〟という考え方は不合理というか住宅で起きる前提や想定から考えると矛盾している考えのように感じるのです。

これらの考えは、独立当初から一貫して主張してきた考えですが、言葉だけでは伝えるのは難しいものだと感じています。現在、仮ではありますが、自邸が出来ました。その主張を自身で実践しています。もし、少しでも、何となくでも、共感できる方がいらっしゃったら、是非、我が家を見に来て下さい。

「この考えが正しい!」と激しく主張するつもりはありません。住宅に関する価値観は十人十色です。価値観は〝違い〟であって〝優劣〟でも〝勝ち負け〟でもありません。ただ、様々な価値観に触れた中で、自分にあった〝住み方〟をジャッジしてほしいと思うのです。