人生最大の買い物を人生最大に楽しむ

10万円渡されて「好きに買い物していいよ」と言われたら楽しいですよね?

住宅は、人生最大の大きな買い物です。人生最大に楽しまなきゃ損じゃないですか?

しかし、実際は、楽しめずにいる人が多いように感じます。

とは言っても綺麗事だけではなくて、苦しむポイントはあります。それは、お金に絡む部分です。住宅ローン審査や手続き、土地選びでの予算の兼ね合い、建物工事費の金額調整等です。その部分は、やはり皆さん苦しみます。

でも、それ以外の部分は、楽しむべきだと思うのです。だからといって「無理やり楽しめ」と言うのは乱暴な話で、楽しめるかどうかは、設計側の問題だと思っています。

そのように考える中で私が心掛けていること大きく分けて4つ程あります。

1.『ワクワクするような提案をすること』
これが大前提です。プランであったり、デザインであったり、素材であったり、ワクワクしない、楽しくない提案をされれば、当然、楽しめるわけがありません。不安にもなっていくでしょうし、信用もできなくなっていきます。そうすると多くの打合せを重ねていくこと自体も楽しめなくなります。良い意味でクライアントを裏切るような提案をするべきだと考えています。

2.『決断の責任転嫁をクライアンにしないこと』
住宅は、多くの決断を求められるものです。特に設計事務所の場合は、標準仕様がない為、特別に多い。その決断をクライアントに委ね過ぎてしまうと、多くの宿題と〝決めるストレス〟を抱えてしまいます。ですので、私は、まず、どのようなものが好みか等、イメージをヒヤリングし、全体のデザイン的なバランス、コスト的なバランスを考慮した上で「これはどうですか」とこちら側から提案をするようにしています。それに対してYES・NOで答えてもらう。NOであれば、その理由を聞き、また新たな提案をする。その繰り返しです。そのような方法をとることで、なるべくクライアントが宿題を抱えないようにしています。宿題の問題を私とクライアントで作り、その答えは私が解答し、クライントと一緒に答え合わせをする。といった感じでしょうか。

3.『あらゆることを想定し、考え抜くこと』
〝住宅は3度建てなければ満足できない〟等という言葉があります。誰がいつ、どのような意味合いで使い出したのは不明ですが、私はこの言葉は、設計者の言い訳に聞こえてしまいます。あらゆることを想定し、考え抜き、クライアントは、どう考えるかをしっかりヒアリングをした上で解決策を思案することは設計者の責務だと思うからです。そのような手順を疎かにした結果、住み始めてから「ここはこうすればよかった」「次もし建てる機会があればこうしよう」等と後悔に繋げてしまうのではないのでしょうか。

4.『しっかりした設計監理をすること』
これは、当然のことなので、改めて言うのも恥ずかしい話のですが、上記のような心掛けをしながら、クライアントと打合せを重ね、それらを図面に反映したとしても、その通りに現場が進まなければ、何の意味がありません。ですので、図面通りに現場が進んでいるのかをしっかりと設計監理することは必須条件です。しかし、その部分がおざなりにされ「完成したら打合せ内容通りになっていなかった」というケースを耳にすることは決して少なくありません。多くの決め事に対して、その抜けが出ないように書類や図面に加え、頭の中の整理整頓をしっかりしながら設計監理を行うべきだと考えています。

住宅は、一生の一度の大きな買い物です。住宅ローンを組むのが大半ですから数十年という長い買い物でもあります。居住期間は、勿論ですが、設計期間、工事期間も含め、楽しんで頂き、後悔のない家造りになるよう、設計サイドが力を尽くすべきではないのでしょうか。